特別養護老人ホーム 明幸園

【鰻屋のおばあちゃん】

 尊き命の最後を、私たちの温かな施設にてお見送りさせていただいた。まるで星が消えていくように、そして美しく。息を引き取る瞬間に立ち会うことが大切ではなく、今の自分にできることを、その人に思いをめぐらせていくこと、それが本人にも伝わること、それが看取りとなること。私たちは知っている。

 鰻屋のおばあちゃんは亡くなる前日、家族が持ってきた鰻を口にした。鰻の香ばしい香りが漂う空間に家族が集まり笑顔があふれた。まるで春の陽射しのように温かく、年輪を刻んだおばあちゃんを囲んだ。時を超えた愛と情熱が詰まった鰻を食べ翌日、彼女は旅立ちの時を迎えた。

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 悲しみの影が心を覆うよりも、感謝の気持ちがこぼれ落ちた。命の灯火が消えゆくその瞬間、私たちは静かに、そして深い敬意をもって、最期の旅路を見守る看取り介護を行った「鰻屋のおばあちゃんのはなし」でした。